フランスの台所に学ぶ、余り食材でおいしく節約する家庭料理の知恵

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フランスの女性たちは、食費を膨らませずに美しく、しかもきちんとおいしい料理をつくる術に長けてきた。家庭の台所では、美意識と現実的な倹約が心地よく同居している。パリからリヨン、マルセイユまで、日々の料理は、他の人なら捨てかねない食材から始まることが多い。合言葉はシンプルで、捨てるものは何ひとつない――その徹底ぶりこそ、フランスの家庭料理を実用的にしている。

マッシュルームの軸は冷凍庫へ

フランスでは野生きのこは希少で高価なため、日常使いはマッシュルームが中心。きれいな傘だけが必要な料理でも、軸は捨てずに袋に入れて冷凍する。あとでポタージュやソース、キャセロールに加えれば、香りが立ち、食べごたえが増し、家計にもやさしい。

野菜の切れ端はスープに

にんじんやかぼちゃ、ズッキーニの端、ハーブの茎、レタスの葉まで、切れ端はまとめて冷凍へ。袋がいっぱいになったら、香りのよいピュレに仕立てる番だ。コトコト煮て撹拌すれば、ほとんど何もないところから、温かくなめらかな一皿が生まれる。

エビの殻はビスクの土台に

フランスの台所のひそかな切り札のひとつがビスク。乾燥させて砕いたエビの殻でつくる濃厚で香り高いベースだ。野菜や香辛料を合わせれば、スープやソースの芯のある旨みに。多くの人がゴミとみなすものが、風味を支える材料に変わる。

固くなったパンはグラタンに

乾いたスライスを捨てることはない。魚や野菜、肉、チーズ、あるいは米とも相性のよいキャセロール(オーブン焼き)にぴったりだ。焼く予定がなければ、パン粉にしておけばいい。これぞ、昔ながらの倹約の王道。

衣はもう一度使う

カツや魚を揚げたあとに残る小麦粉とスパイスのミックスも、慌てて処分しない。容器に移して次回に回し、必要に応じて新しい分を足していく。小さな習慣だが、出費を抑え、無駄を減らす効果は大きい。

チーズは最後の欠片まで使い切る

少し乾いたり硬くなったチーズは、ビスケットやピュレのスープ、キャセロールのベースに生まれ変わる。傷んでいない限り、かけら一つたりとも無駄にしないのが流儀だ。

盛りつけが節約を後押しする

気持ちのこもったテーブルは、どんな料理も一段とおいしく感じさせる。上品な器と整った盛りつけが、控えめな食材にも小さなハレ感を添えるからだ。その高揚感は確かに効いて、皿の中に意図と奥行きが宿る。

料理名にも効き目がある

ときには見せ方がすべてを左右する。メニューでは、ただのトーストがクルトンと記され、ありふれたオムレツはプロヴァンス風ハーブのオムレツとして紹介される。料理名の響きを工夫するというシェフの手法を家庭でも借りれば、それだけで一皿の魅力はぐっと増す。