23:57 06-12-2025
ラゴ=ナキ台地を歩く:アディゲヤの絶景と世界遺産、伝説ルート30、カルストと高山草原、週末トレイル案内
Generated by DALL·E
アディゲヤのラゴ=ナキ台地を実踏取材。サニー・グロットやウチュグ岩、ユネスコ世界遺産の高山草原、カルストのドリーネ、伝説のルート30まで。入域料や週末トレイルのヒントも紹介。ラゴ=ナキ保護区の歴史、季節の見どころ、アクセスと新ルート計画、注意点まで丁寧に解説。氷河や多年性雪田、石の海ミジェヒの絶景も。
アディゲヤの山地へ向かう道の出だしは予想どおりだ。滑らかなアスファルト、ボリシャヤ・アジシュスカヤ洞窟を示す標識、バックパックのハイカーたち。ところがカーブを一つ越えると舗装は途切れ、道は岩壁のあいだをくねりながら高度を上げていく。その瞬間から、本当のラゴ=ナキ歩きが始まる。伝承に包まれた台地で、眺めはどこか太古の記憶を呼び覚ます。
峠からウチュグ岩へ、アバジェフ人の“黄金の草地”
アジシュ峠はひんやりした空気と深い森で迎えてくれる。ここから道はウチュグ岩へ。クルジプスの深い谷によってラゴ=ナキの台地から切り離された岩の露頭だ。アディゲ人最大の氏族であるアバジェフ人にとって、この地は宝物だった。広大な群れを養う高山の牧草地。ここを公爵の所領にする発想はなく、土地は共同で守られてきた。隣り合う二つの斜面の対比も印象的だ。一方は陽光に満ち、雪渓の縁まで草原が装い、もう一方は濃い森の陰に沈む。
サニー・グロットとラゴ=ナキの大パノラマ
崖縁をもう少し辿ると、昼の光が差し込む天然のアーチ、サニー・グロットに出る。乾いて暖かく、台地の眺めを額縁のように切り取って見せる場所だ。さらに進めばアディゲ・チーズの売店や小さなゲストハウス、新しい建物が点々と現れ、車の流れも途切れない。すべてはカフカース生物圏保護区のチェックポイントへと吸い寄せられていく。
ラゴ=ナキ保護区――UNESCOが認めた風景
1992年以降、ラゴ=ナキはカフカース保護区の保護ゾーンに含まれている。1999年には西カフカースがユネスコの世界遺産リストに加わった。入域料は1日300ルーブル。その見返りはたっぷりだ。森の上に空の島のように浮かぶ、数十キロにおよぶ高山草原が広がる。ここは夏より秋のほうが落ち着いているが、緑の季節にはエメラルドの草と花々が目を引く。遠くにはアバゼシュ、オシュテン、フィシュトの堂々たる峰々。氷河は驚くほど低い位置に横たわる。山の気候は穏やかに感じられても、雪の多い冬がしっかり刻印を残すのだ。
伝説のルート30と週末トレイル
1949年に考案された名高い「ルート30――山を越えて海へ」は、この台地を横切る。古典的な行程はグゼリプルに始まりダゴミスで終わり、徒歩で2週間。短縮版なら数日で一部を踏破できる。肩慣らしなら、台地の縁をなぞるローカルの週末トレイルがちょうどいい。ラゴ=ナキの主役は地表ではなく地下に潜んでいるからだ。
カルストのドリーネと、溶けきらない雪田
ラゴ=ナキはカルストのドリーネが豊富で、地下都市の入口のように見えるものもある。最大のものはチェックポイントからおよそ3キロ。携帯基地局が道標になる場所だ。ここには多年性の雪田が張りつく。9月にもなると砂埃をまとってはいるが、消えはしない。本物の氷河とは違い、足もとがゆるく登攀は危険だ。
石の海、そして新道の試金石
台地の縁は「石の海」と呼ばれる。アディゲ語ではミジェヒ。下方では2018年から、グゼリプル側から長いつづら折りの道が建設中だ。新しいルートは、台地への主な玄関口の一つであるインストルクトルスカヤ峡谷の近くまで訪問者を導くはずだ。地域当局は道を環状につなぐ構想を議論しているという。もし実現すればラゴ=ナキの周遊はぐっと容易になるだろう。とはいえ、保全をめぐる議論が再燃するのは避けがたい。
後ろ髪を引くパノラマ
その向こうで西カフカースの峰々が画を締めくくる。ボリショイ・トハチとマリィ・トハチ、幻想的なアチェシュボク、厳めしいチュグシュ。ロシアのどこにも間違えようのない地平線だ。ここで「山の民の金」という呼び名に腑に落ちる。きらめきはないが、自由を与え、糧となり、守り、世代を越えて記憶に残る財貨なのだ。