15:29 01-12-2025

抗うつ薬で性欲は戻らない?副作用の仕組みと回復策、受診の目安、SSRIやSNRIで起こる性機能の変化も解説

抗うつ薬は性欲低下を招くことがあり、いつ戻るのか不安に。SSRI中止後の性機能障害の頻度、影響が少ない薬、受診の目安、運動や治療調整など回復策を医療情報に基づき解説。ホルモン変化や勃起障害・膣乾燥などの症状、男女に共通する注意点、SSRIやSNRIの違い、bupropionなど性機能への影響が少ない選択肢も紹介

抗うつ薬の副作用としてよく語られるのが性欲の低下だ。開始から数週間で変化に気づく人もいれば、治療が数カ月進んでからようやく感じる人もいる。では、落ちた性欲が戻らないことはあるのか――多くの人が抱く疑問だ。医学的な見解と、本当に心配すべきタイミングを整理した。

抗うつ薬の仕組み

抗うつ薬はうつ病だけのための薬ではない。不安症、強迫性障害(OCD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、摂食障害にも用いられる。作用の軸は、気分や情動反応を調整する神経伝達物質だ。

これらのバランスを整えることで心の安定が図られる一方、その波及はホルモン系など他の仕組みに及ぶこともある。

性欲が下がる理由

性欲が落ちる背景はいくつかある。

ホルモンの揺らぎ

抗うつ薬はテストステロンやエストロゲンに影響しうる。これらのホルモンは性欲と直結しており、働きが弱まればリビドーも弱まる。

身体的な変化

一部の患者は次のような症状を訴える。

こうした反応は不快で、ストレスを強めがちだ。ストレス自体が性への関心を下げる要因になる。

性欲は永久に失われるのか

一般的な経過はこうだ。副作用は治療の初期に現れ、徐々に和らいでいく。数週間で落ち着くこともあれば、2~3カ月かかることもある。とはいえ、まれに持続する例が医学文献に記録されており、「SSRI中止後の性機能障害」と呼ばれる。発生頻度は約0.46%。改善が止まっているように思えると不安は募るが、見通しの目安を知っておくと過度な心配を避けやすい。

仕組みはエピジェネティックな変化と関連しており、セロトニン系の特徴が中止後も残ることがあるとされる。治療をやめて2~3カ月たっても改善が見られない場合は、受診が重要だ。男女いずれにも当てはまる。

性機能への影響が少ない薬

副作用が目立ちやすい薬:

反応には個人差がある。まったく変化を感じない人もいれば、数週間で性欲の低下がはっきりする人もいる。

性欲を取り戻すには

抗うつ薬の治療中や終了後に、次のアプローチが助けになる。

身体活動

女性では、運動後およそ30分で感受性が高まりやすい。男性では、有酸素運動が勃起機能の改善に役立ちうる。

パートナーとの情緒的なつながり

親密な時間を計画する

副作用が出やすい時間帯があるなら、負担の少ないタイミングを選ぶ。

治療の調整

医師が用量を変えたり、補助的な薬を加えたり、別の抗うつ薬に切り替えたりすることがある。現場では、性急な決断よりも、小さな調整を積み重ねるほうが奏功しやすいことが少なくない。

性欲を高める薬(要処方)